• 天皇賞 春 2004年

天皇賞 春・秋

第129回 天皇賞(春) 2004年

前年2003年の菊花賞、有馬記念で2着に入り、前走の阪神大賞典を制したリンカーンが武豊と共に参戦している。同じく2003年の皐月賞、ダービーの2冠を制したネオユニヴァースもいる。そのネオユニヴァースの「3冠」を菊花賞で阻んだザッツザプレンティもいる。役者は揃っていた筈だ。だがレースは意外な馬が勝利を飾ることになる。意外な光景が展開された。

スタート直後から横山典弘騎乗のイングランディーレが先頭に立つ。1周目のスタンド前、1コーナー、2コーナー・・・。イングランディーレと横山典弘は後続との差をどんどん広げていく。これは大逃げだ。だが、そんな大逃げにファン達は驚きつつも、どこかで馬群に捕まってしまうのだろうと思って見ていた。このレースは3200メートルもあるのだ。3コーナーには「淀の坂越え」と呼ばれるアップダウンの難所もある。そんなに飛ばしていてはスタミナがもたないだろう。きっと横山典弘以外の騎手たちも、離れた前を行くイングランディーレを見ながらそんなことを考えていたに違いない。

「淀の坂越え」に差し掛かる。坂の下りで後続馬に乗る騎手たちの中には手が動き出す者もいる。スパートをかけたのだろう。後方から前に進出を始める馬もいる。ここまではいつもの天皇賞(春)の光景だ。だが4コーナーから直線に入ったところで皆、ある異変に気が付くのである。

前を行くイングランディーレとの差がなかなか詰まらない。イングランディーレの脚色が衰えないのだ。伸びてくるはずのリンカーンも、ネオユニヴァースも、ザッツザプレンティもその伸びを欠いている。イングランディーレを追いかけるのは道中、離れた集団の前の位置でレースを進めていたゼンノロブロイとシルクフェイマス。しかしこの2頭も前を追いかけるというより、自分のポジションを確保するのが精一杯の様子だ。

そんな伸びを欠く後続馬たちを尻目に、イングランディーレは先頭でゴール板を駆け抜けた。横山典弘が馬上で手を上げる。しかし信じられない光景に、その横山典弘のポーズに応える余裕のあるファンはいなかった。場内もどことなく静まり返る。無理もない。誰も注目してない10番人気馬が、人気馬同士が牽制し合う後続の間隙をついて涼しい顔をしながら逃げ切ってしまったのだから。波乱を演出する馬のタイプとして「人気薄の逃げ馬」を挙げる人がいる。ノーマークになってし まう為に、マイペースでレースを運ぶことが出来るからだ。この2004年の天皇賞(春)はまさにそのパターンに当てはまった年だと言えるだろう。

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